海外への留学を検討する人の多くが最も気になるポイントのひとつが、「留学にはいくらかかるのか?」という点です。留学にかかる費用は留学先となる国や留学先の機関、留学する期間、現地での生活スタイルなどにより大きく異なります。また、目的が語学留学かそれ以外での留学なのかによっても異なってくるでしょう。ここでは留学にかかる費用について、大体の相場観を掴めるよう、必要な費用の内訳や留学期間・留学先別の相場について紹介していきましょう。
留学にかかる費用
まずは留学にあたりどのような費用がかかるのかの全体像を把握しましょう。語学留学には、留学先への出発前と出発後でそれぞれ下記のような費用がかかります。
留学前 |
|
---|---|
留学中 |
|
留学後 |
|
留学前にかかる費用
渡航用の航空券料金
渡航のための航空券代は留学先と経路、時期、原油価格によっても異なってきますが、最も安いフィリピンでも往復で5~10万円程度、アメリカやイギリスの場合、渡航先の都市によっても異なりますが20万円前後かかります。留学先と期間が決まり次第できる限り早くチケットを予約することで金額が低くなるのはもちろんのこと、他にも、LCCを活用する、直通でなくトランジット(乗り換え)のあるルートを検討することで、航空券代をかなり抑えることができます。
海外旅行保険
海外旅行保険の保険料は留学期間や補償内容によって異なります。例えば留学期間が1ヶ月であれば1.5万~2万円程度、半年間であれば9万~12万円前後、1年間であれば18万円~27万円前後が相場となります。
パスポート・ビザ申請費用
まず海外への渡航のためにはパスポートが必要となります。そのための申請費用として、もし新規作成するまたは期限が切れている必要があれば、11,000円(5年間有効)および写真代として3,000円程度が必要となっていきます。
さらに留学期間と留学先によっては、ビザ申請にかかる費用も必要です。例えばアメリカに留学する場合、原則として週18時間以上の授業時間数でフルタイムの留学をする人は、滞在期間に関わらず学生ビザ(F-1ビザ)を申請する必要があります。F-1ビザの場合、申請前にSEVIS費用(SEVISとは留学生の入国管理用のオンラインシステムのこと。2001年の同時多発テロ以降、入国した学生を管理する方法が厳格となったため必要になった)として200ドル(USD)、ビザ申請料金として160ドル(USD)を払う必要があります。
また、ビザ申請のためには少し煩雑な書類手続きが必要となりますが、それらをエージェントなどに代行して申請してもらう場合にはさらに5千円~3万円程度かかります。
なお、1ヶ月程度の短期間の留学であれば、ビザの代わりにビザ免除プログラム(アメリカであればETAS、カナダではeTA)を検討することも可能なのですが、最近では空港内での感染症検査の期間が長期間化しており、あまりおすすめはできません。
健康診断受診料
語学留学をする際は留学先の学校で英文の健康診断書が求められることがあり、健康診断の受診料もかかります。
例えば海外では狂犬病など非常に高い致死率の感染症が根絶に至っていない国があり、日本ではほとんど気にすることがなくても感染症への対策は万全に越したことはありません。
必要な予防接種を受ける場合、ワクチンの接種1回につき5千円~1万円程度かかります。
滞在に必要な備品の購入費用
滞在・移動に必要となるスーツケースやカバン、普段生活するための洋服、もし必要であれば常備薬などの備品類も一通り整えておく必要があります。海外では病院にかかる医療費が日本に比べて非常に高額なため、気軽に病院に行くというのは少し躊躇われるかもしれませんので、常備薬は必ず事前に用意しておきましょう。既に海外での長期滞在に慣れており、海外滞在のためのグッズが揃っている方であれば別ですが、そうでない方の場合、様々な備品の購入費用として少なくとも数万円程度はかかるでしょう。
留学エージェント費用
留学を申し込む方法として多くの場合、留学エージェントを利用することになりますが、エージェントへの手数料も払う必要があります。支払う手数料はエージェントや依頼する内容の幅によって異なりますが、エージェントに支払う費用は渡航前のカウンセリング費用や申込費用、学校への申込手数料、ビザ申請代行手数料、ホームステイの手配料、現地での送迎手配料、現地での生活サポート費用など多岐に渡り、ケースによっては想定以上に高額な手数料をとられてしまう可能性もあるので注意が必要です。
留学中にかかる費用
授業料
留学中の授業料は、留学先の国や選択する科目・コース、講義の数、専門科目(語学目的かその他の研究等の目的か)などにより大きく変わります。総じて言えることは、長期間の留学になればなるほど単位期間あたりの授業料は低くなっていくという点です。短期留学の場合はどうしても割高になります。
教材費用
教材費用がかかるかどうかは学校によっても異なります。授業料に含まれている場合もあれば、テキストを指定され購入する必要があることもあります。
宿泊費用
宿泊費用についても、ホームステイか学生寮か、学生寮の中でもルームシェアをするのか個室にするのか、学生寮のグレード・ロケーションなどにより料金は変わります。基本的に学生寮の個室が最も料金が高くなります。
宿泊費用について注意しておきたいのは、宿泊場所の治安です。いくら宿泊費用が安くても治安が悪いエリアに滞在することは海外ではおすすめできません。ご存知だと思いますが、日本の治安は世界の中でもトップクラスで良いため、海外ではメインストリートから一本奥に入っただけで治安が非常に悪いということも珍しくありません。
交通費
授業料や宿泊費用以外にも、ホームステイ先や学生寮から学校に行くまでの交通費も必要です。バスや電車などの公共交通機関を利用するのが一般的ですが、1回あたりの金額は少額であっても、毎日の通学が長期間続けばトータルではそれなりの出費になりますので、注意が必要です。
生活費
食費や日用品などの生活費は留学先の国に物価によって大きく異なります。アメリカやイギリスなど先進国への留学の場合は、1ヶ月あたり10~15万円程度かかると考えておきましょう。
娯楽費
留学ですから遊びに行くわけではないといっても、現地の有名な場所に遊びに行くこともあるでしょう。頻繁に行くほどでなければ費用が膨らむことはないでしょうが、あまりカツカツに生活を切り詰めるよりは人生経験としてある程度の予算は見込んでおくべきでしょう。
帰国用の航空券料金
忘れがちですが、帰国するためにも航空券が必要です。少しでも費用を低く抑えるポイントは渡航用の航空券料金と同様ですが、期間が決まっている留学であれば、渡航時点で帰りの旅行券を確保しておくということも可能でしょう。
留学後にかかる費用
語学力維持のためのスクール費用等
語学力は維持するにも苦労することがあります。バスケ漫画のスラムダンクにも触れられていますが、短期間に身につけた能力は、もし使わなければ失われていくのもまた早いというものです。
もし語学留学であれば、そもそもは帰国してから英語を頻繁に使わないから留学することを決めたと思いますので、帰国してからは英語を使う機会は極端に減っていることでしょう。英語の能力を維持するために、一般的には、英会話スクール等のサービスを使って定期的に英語を使って会話するということを行います。
留学先・留学期間ごとの費用の目安
1年間の海外留学をした際にかかる平均的な1ヶ月の費用についてのデータを紹介しておきましょう。学費、居住費(家賃)、食費・生活費のみで、渡航費は含まれていません。
- 学費:6.8万円
- 居住費:4.4万円
- 生活費:4.3万円
- 合計:16.5万円
データの出典:JASSO留学実態調査
実際の国ごと・期間ごとの費用の目安は以下のようになります。
留学先 | 3ヶ月 | 6ヶ月 | 12ヶ月 |
---|---|---|---|
イギリス | 100~130万円 | 170~280万円 | 320~480万円 |
アメリカ | 90~120万円 | 150~250万円 | 300~450万円 |
カナダ | 80~110万円 | 140~240万円 | 280~430万円 |
オーストラリア | 70~100万円 | 140~200万円 | 280~400万円 |
ニュージーランド | 70~90万円 | 140~190万円 | 280~380万円 |
フィリピン | 60~80万円 | 100~150万円 | 180~300万円 |
費用を節約するポイント
留学のために費用を節約するポイントについても紹介しておきましょう。
- 留学エージェントをうまく活用する
- 航空券料金は工夫して金額を抑える
- 長期割引やキャンペーンなどを利用する
留学エージェントをうまく活用する
語学留学費用を抑えるうえで効果的なのは、できるかぎり留学エージェントを上手く使って手続きを進めるというものです。うまく使うというのは例えば自分でも簡単にできる、航空券の手配は自分で行い、一方で自力では時間のかかる学校への申込やVISA申請手続きなどを進めてもらうという方法です。普段は仕事で忙しく、経済的に余裕がある社会人の方の場合は、留学の準備にかかる手間や安全をお金で買うというのもおすすめですが、そうでない場合は留学エージェントを利用せずに留学の手配を進めることで費用を抑えることも選択肢になるでしょう。
航空券料金は工夫して金額を抑える
出発時と帰国時に必要となる航空券の費用も大きな出費の一つです。できる限り早めにチケットを予約する、直行便ではなく経由便を利用する、フィリピンであればLCCを活用するなどちょっとした工夫をするだけでも、トータルで数万円~10万円以上の違いが出てきます。
長期割引やキャンペーンなどを利用する
留学先の学校によっては、長期間留学をする場合の割引や、閑散期のキャンペーンなどを展開していることもあります。こうした学校側が用意している特典を利用するのも手です。
費用を意識しすぎて目的を見失わないように
誰もがかかる費用はできる限り抑えたいものですよね。留学費用よりも重要な点は、出費に対しどれだけの見返り、言い換えれば「経験」「能力」が得られたかという「費用対効果」です。海外生活に伴う無駄なストレスを極力減らし、勉強に集中するためには快適な生活環境を整える必要があります。そのためには、治安の良いエリア、学校から近い、個室がある、など条件の良い滞在場所を探す必要があります。
留学の成果を最大化しようとすれば、費用はよりかかってしまいますが、その結果として大きなリターンが得られるのであれば、それは「投資」であるとも言えます。
特に社会人の場合、多少費用をかけてでも快適な環境と濃密なカリキュラムを希望する人が増えてきています。無駄な費用をかけないことはとても重要ですが、ぜひ「費用」だけではなくその「効果」を最大化させるということを忘れずに考えるようにしましょう。